◎ 始 め に …
←ハセガワ(HASEGAWA) 1/48 P-51D MUSTANG
1991年の発売からすでに25年以上が経っているベテランキットですが、現在も定番商品やデカール替え限定販売商品として生産が継続されているだけではなく、2014年には
OEM で イタレリ(Italeri) からも右のような 1/48 #2745 MUSTANG Mk. IVa. や #2743 N.A. P-51D/K Pacific Aces として販売が開始されました。
ただし、日本で長らくイタレリ製品の輸入販売を行っているタミヤは、以前同じようにハセガワの
OEM で販売した イタレリ版 1/48 タイフーン の輸入販売は行いませんでしたので、今回もやはり、このアイテムに関してはタミヤルートでの輸入販売は行わないような気がします・・・(^^ゞ
キットは十数年前、ライター諸氏が模型誌などの作例記事で、機首の角張りと扁平をむやみやたらに主張した時期に出された製品なので、それ以前に流行した太過ぎるだけの機首はかなり抑えられてきたのですが、すごく角張ったというか扁平な機首上面となってしまっています。
また、それに対して後部胴体は極端に薄くて、高さも余分にあるので、ドーサルフィンを含めた側面形に、少し違和感がありますし、上方から見たときの頭デッカチ感は相変わらずあります。
デカール替えで初期型も出ていますが、キットは背ビレ付のままで説明図に切り取るよう指示してあるだけで、別に切り取り易くはなっていません。(余談ですが、タミヤのE2☆Cは切り取りの指示も無く、逆にデカールの説明図にドーサルフィンを付けるという暴挙に出ちゃってますので、それよりはマシかも・・・)
主翼下面の三つずつ並んだ薬莢排出孔の後にある二つの小さな穴は、パイロンの着脱のためのもの
(弾帯のリンクの排出孔だとした書籍もありますが…) で、実際はパイロン後端を挟むように薬莢排出孔の前に開いていなくてはいけないのですが、どんな資料でこうなってしまったんでしょうか・・・
限定発売でハイテクデカール入りやSP帯のバリエーションでレジン製の自重変形タイヤ入りなどもあり、現在も毎年のようにデカール替えキットが限定発売されていてバリエーション点数としては多いですが、基本のキットはどれも同じです。(多すぎるのでこちらでは各箱絵は省略しましたので、[ボックスアートデータ]の[48D-10] でバリエーションの箱絵を参照してください)
また、ハセガワ(HASEGAWA) のお得意のデカール替えのバリエーションとして 2008年3月頃に発売が予定されていた、 #09795 1/48 P-51D "GREEN
NOSE" ですが、これは発売にならないままで欠番となり、当時の新製品情報 (バックナンバー)
からも予告の存在自体が削られてしまっています。
その他に特記しておく必要がありそうなのは、特別仕様の二種類で、 #09377 ラム・ジェット・テストベッド機 は元のデカールが抜かれて、テスト機のデカールと円筒状のレジンパーツ四個が入れられただけですが、 #09350 ミスアメリカ バージョン にはデカール替えのほかに、戦後のハミルトン・スタンダードの櫂状のペラとVHFアンテナ、切断した翼端用のメタルパーツが入っています。
なお、コレクターズハイグレード 'スーパーディティール' というタイトルで高い価格で発売されたものがありますが、デカールは最初に発売された
J14 と同じ物で、フラップ,照準器,コクピット左右壁のコンソール機器,自重変形タイヤなどのレジンパーツ8点を加えただけとなっていて、キット自体の間違いや欠点を直したわけではありません。
どうせならモノグラムのプロモデラーシリーズのように金型にまで手を入れる本気を見せてほしかったところです
!
これだったら、通常キットとの差額の二千円分で自分好みのディティールアップパーツを買うとか、好みのマーキングのデカールを買ったほうが納得できる気がします・・・というわけで、同じキットが使われている
コレクターズハイグレード 'スーパーディティール' [48D-11] に関しましては、レジンパーツの収縮や変形などに気を付けてパーツを交換
(フラップは元のモールド部分を切り取る必要がありますが…) してやるだけですので、単独の
モデリングガイド は書きませんが、本体のキット作成時の注意点としては同じですので、このガイドを参考にして基本的な工作を行ってください。
◎ 仮 組 み
で、パーツを見てみると、A部品28点、B部品22点、C部品37 点×2、透明部品10点の計
134点 となっています。
もっともこれはアクセサリー類の部品も多数はいっていますので、タミヤと同じように基本の機体を組めるパーツとしてアクセサリーの部品を抜いてみますと、86点となります。
ハセガワのコクピットは15点の部品を組んでサイドコンソールまでを床板に組み込みますので、無線機まで一体になった床板パーツに
6点の部品を組み込むだけで済んでしまうタミヤとは違いかなり手間が掛かります。
そして胴体などもタボが小さいので、無理に両手両足を駆使して押さえるよりは、マスキングテープなどで確実に仮固定してゆき、自分のイメージに合うところと、修正するべきところを確認していってください。
僕の場合は機首周りの形状とサイドのシルエットの上下幅の広すぎなどが一番気に掛かるところになるかもしれません。
なお、ドーサルフィンの無い初期の機体にする場合は、切り取りやすいわけではありませんが、切り取っても隙間が開かないようにドーサルフィンの部分はムクになっていますので、事前にしっかりと接着しておけば、タミヤのキットのように切り取った後の胴体部分へのパテ埋めは、さほど必要がないと思われます。
ただし、ドーサルフィン無しの機体にすると、機首の角張りと太り過ぎが強調されてしまう結果となり、アンバランスになってしまうので困るのですが・・・
なお、各パーツの合いは悪くはないのですが前述いたしましたように、ダボが小さくてピタッと嵌るというわけではないですし、胴体内に配置されるパーツも多数ありますので、仮組みにはマスキングテープなどを多用する必要があると思います。
また、このキットは、主翼の補助翼やフラップ部分は全て一体で上下の貼り合わせになっていますので、フラップが下げ状態になった写真がたくさん有る、地上姿勢のムスタングの姿を簡単に再現したいという方にはあまり向かないと思います。
まぁ、レジンパーツのフラップ部分などをキットにプラスして、コレクターズハイグレード 'スーパーディティール' というタイトルで、高い価格で発売されたものもありますが、キットのフラップ部分を切り取らなくてはいけないという手間は変わりません。
主脚収納庫はハセガワ独特の浅彫り表現ですが、デティールが細かく表現されているうえに、塗装の上手い人であればかなり塗装で誤魔化せますし、同社 1/72 のキット [72D-18] のように主車輪ドアパーツを閉位置にできない…というほどには浅くはないので、主車輪ドアを閉めて我慢できないこともない…(-_-;)
なお、主翼にロケット弾やバズーカランチャーなどのカクシ穴が沢山ありますので、作成前にどの機体(武装)にするかを決めて、開口しておいた方が良いと思います。
それと、排気管もそのままでは後から取り付けたりすることは不可能ですし、途中で落ちても付け直しには大変な労力を要しますので、後付けできるような加工をしないのであれば、最初に塗装などを決めて排気管を選択したら、途中で外れたりしないようにガッチリと付けておく必要があると思います。
プロペラは カフスつきのハミルトン・スタンダード と K型用のエアロプロダクツ
の二種類が付いていますが、戦後の オール状カフス無しのペラ(ハミルトン・スタンダードの6547A-6)
は、基本的には付いていません (ただし、 #09350 ミスアメリカ には、ホワイトメタル製の戦後のハミルトン・スタンダードの櫂状のペラのパーツが入っています)
ので、戦後の機体にしたい場合は他から調達することになるかもしれません。
また、キャノピーはいわゆるダラス型とイングルウッド型の二種類が付いていますが、これは現地(戦地)での破損・補修の関係で必ずしもその通りでなく、D型にダラスタイプ、K型にイングルウッドタイプのキャノピーが付けられた写真も見受けられますので、機体ごとに写真などで確認する必要があるかもしれません !
(一説では、「実機の補修用のキャノピーは現地での切り方でイングルウッド型にもダラス型にもなるようなものだった」、とも言われていますので、搭乗員の希望で変えていたのかもしれません・・・)
◎ 修 正 開 始
まずは、一番気になるスピナキャップと胴体先端部の段差を含めた機首周りの修正でしょうか……。
一番目立つスピナですが、ちょっとトガリすぎだったタミヤ(右の銀メッキのもの)と較べると、スピナキャップの付け根の直径が
1mm 小さいのですが、長さも 0.5mm程短く、絞り方がなだらかになっているので、極端にスマートすぎるというわけではないのですが、機首の形状が頭デッカチなうえに角張っているので、イメージが違うような気がするんですよね。
ただ、ここいらへんはキッチリとした寸法でだせるもんじゃないので、各人の好みの問題だとは思いますので、こういう方がムスタングらしいって人もいるのかもしれません……
でも、私はもう少し丸っこいほうが好きですので、少し先端の丸味をオーバー目にしてやりました!
で、次に胴体側ですが、まず機首上面先端の角張りは、スピナキャップ付け根側との間にギャップを生じていますので、先端部分からスムーズにラインが繋がるよう先すぼまりになるように、なだらかに削って段差を無くしてやります。
そしてウインドシールド直前の胴体部分の断面が半円形に近づくように、これも角張りを丸めてやります。
この機首部分とコクピット前の二ヶ所が決まったら、角張りが一番目立つ排気管の上側の角張り(張り出し)を滑らかなアールになるように修正してやります。
このときに機首上面の平面部分をどれぐらいの広さにするのかは各人の好みや印象で決めていただけばよろしいのではないかと思います。
ただ、僕は割りに丸いほうの説を採っているので、排気管上の角張りもかなり落としてアールを付けてあります。
ここがあまり角張っていると、斜め後方から見たときにメッサーのタイフーンみたいでイヤなんですよ。(ハセガワの 1/72 ほどひどくはないですが・・・ )
この機首の修正が終わったら、塗装などを決めて排気管を選択し、途中で外れたりしないようにガッチリと付けておくといいのではないかと思います。
排気管はハセガワ(左)のものだけではなく、タミヤ(右)のものを付けることも可能なのですが、前にも書きましたように後から取り付けたりすることは構造的に不可能ですし、途中で落ちても付け直しには大変な労力を要しますので、最初に塗装などを決めて排気管を選択したら、ガッチリと付けておく必要があると思いますし、万一外れても、胴体内に抜け落ちたりしないように、裏側に当て板を貼っておくのもよいかもしれません。
なお、今回はタミヤのキットと共にドーサルフィン無しの機体にするつもりで、ホビースポット・ユウのパーツに合わせて同じところから切り取りましたので、コチラの後部胴体の輪切り写真でハセガワとタミヤの後部胴体の形状の違いをご覧いただけると思います。
ハセガワの胴体の方が幅が狭く、また高さが上下に引っ張られたように高くなっているのがお判りいただけると思います。
ユウの[タミヤ1/48 P-51B/Dムスタング用「出るまで待てない」バリエーション・素材セット]は基本的にタミヤのキットに合わせてあるので、ハセガワのキットで使うためにはキットとパーツの両方に少し手を加える必要が出てきます・・・とは言ってもさほど面倒な加工ではありませんので、よろしかったら皆様もご一緒にッ
!!(笑)
余談ですが、写真で見えるハセガワのラジエターのパーツの桟は横に走っていて、タミヤのラジエターの桟は縦に走っていますが、これは図面や写真では縦のものの方をよく見かけます。
ただし、縦は縦なんですがタミヤのように三本ではなくて、僕が持っている資料写真では二本のものしか確認できていませんが・・・(^_^;)
なお、ハセガワのキットがマスキングテープだらけなのは、前述いたしましたようにダボが小さいので、嵌め合わせただけだと置いた瞬間にバラバラと崩れてしまうからです。(^_^;)
主翼の機銃は銃口部分のパーツをフェアリングに挿し込んで表現し、最内側のものはひとまわり太いブラストチューブ様になっているなど芸の細かい所を見せてくれているのですが、あまりはっきりとした差がなく、左右とも最外側のものと真ん中のものの銃身の長さの差もイマイチ表現が曖昧になってしまっています。
まぁ、この程度はドリルでの開口で表現が可能なので、さほどの問題ではありませんが、あまりギリギリの太さの刃でやると刃が斜めに滑りますので、ご注意ください・・・
コクピットは機首の頭デッカチの関係もあってちょっと幅が広い感じもしますが、修正は難しいと思います。
また、左右のコンポーネントの付いた隔壁は床板に貼り付けてから組み込むように指示されていますが、位置さえ合わせておけば左右の胴体側に先に貼り付けてから床板部分を挟み込むという手順でも別に問題はありません。
後部スライドキャノピーパーツのヒケ止めタブは不用意に切り取るとフレーム部分を欠いてしまうことがありますので、注意して作業してください。
◎ 細 部
ハセガワ独特の、デティールが細かく表現されているけど深さが浅いという厄介な表現の主脚収納庫は、僕の場合は塗装が上手いとは言えないのでかなり辛いものがあるのですが、同社 1/72 のキット [72D-18] ほどには浅くはないので、なんとかこのままで作っていこうと思っています。 でも、最悪、主車輪ドアを閉めて我慢・・・という可能性もないこともないかな…(-_-;)?!
これをなんとかして深い収納庫にしたい ! …という方は、ハセガワ 1/72 P-51D ムスタング (新) のMODELING GUIDE を参考にしてトライしてみてください。
1/72 のキットほど簡単ではないと思いますけど、やってできない修正じゃないと思いますし、やっただけの満足感は得られるのではないかと思います・・・
あと、主翼の三つずつ並んだ薬莢排出孔の後にある二つの小さなパイロンの着脱の穴(リンクの排出孔だとした書籍もありますが、だとしたらなぜもう一つ開いていないのでしょうか…)は、実際は薬莢排出孔の前に開いていなくてはいけないので、埋めて開け直しておきます。
右主翼端下面の識別灯は、嵌め込めるようにクリアパーツが付いていますが、これは実際には色付きのカバーガラスが嵌め込まれていたようですので、付属のクリアパーツではなく、ユウの[タミヤ1/48 P-51B/Dムスタング用「出るまで待てない」バリエーション・素材セット]に付いていた三色の識別灯用素材を嵌め込んでおきました。
あと、翼端灯も透明のパーツで付いていますが、これも基本的には色つきのカバーが付いていたはずだと思いますので、ユウの三色の識別灯用素材の内から、グリーンとレッドを使用して作製し、最後に嵌め込んでおきました。
で、HOBBY SPOT U のドーサルフィン無しのパーツを付ける胴体後部は、前述しましたように切断面の高さがパーツの接合面よりも
2mm ほど長いですから、ここはスムーズに繋がるように修正を加えてやります。
胴体内のダクトの排出孔パーツ A1 の端がドーサルフィン無しの胴体パーツの下側とスムーズに繋がる位置まで上げておいて、飛び出した部分を整形していくようにすると比較的簡単にできます。
初期型にする時は初期型バージョンデカールのキットのものでも、キット自体は背ビレ付のままで説明図に切り取るよう指示してあるだけで、別に切り取り易くもなっていないので、たぶんこのパーツに付け替える方が、キットのままで胴体接着後にドーサルフィン部分を切り取るよりも後々の加工が楽なのではないかと思いますが、ハセガワの場合はドーサルフィン部分を切り取ってもタミヤのような中空にはなっていませんから、パテのお世話にはならなくても隙間はできないようになっていますので、もちろんこのキットからだけでも
ドーサルフィン無しの機体にはできます。
◎ デ カ ー ル
付属のデカールは各バリエーションキットによって違い、1バリエーションあたり3〜4機種分がある(ハイテクデカールなどは一機分だけだったりします…)ので、とりあえず作りたい機体のデカールが入ったキットを買って、その中で作ろうとする機体の資料を集めて考証していくほうがいいのではないかと思います。
ただ、 #09350 ミスアメリカ バージョン のデカールに関しては、白色部分のみが水平尾翼を除いた全体分入っていて、ブルーとレッドは一部分のみがデカール化された状態になっていますが、白色部分をこのデカールだけに頼るのはちょっと無理なような気がします。
で、今回の作例は、ハセガワのバリエーション(初期型)に入っている Thomas J. Christian 機 E2☆C " LOU IV " P-51D-15-NA(S/N 44-13410) はホーク、 G4☆A "Passion Wagon" P-51D-5-NA(S/N.44-13691) はフジミのキットで作ってしまいましたので、キットのデカールは使わずに、別売りのデカールで使えるものを探そうと思っています。
◎ 結局・・・
いろいろ書いてみましたけど、P-51D ムスタング のキットが沢山出ていて、自分のイメージに合ったキットを選ぶことが出来るって事は本当に幸せなことですよね。
機首部分が平らで角張っているのが P-51D の特徴だと思われている方も多くいらっしゃいますので、こんなに手を入れなくてもイメージに近いとお思いの方も多いでしょうから、このキットをお選びになる方も多いのではないかと思います。
まぁ、バリエーション(デカール替え)キット ばかり出てくるので、コレクターの方は集めるだけでも大変だと思いますが、最近は別売りデカールだけでもキットと同じぐらいの価格がするので、安くスタートするオークションで狙ってみるとか、
HOBBY SPOT U のように過去に限定発売されたキットなどを扱っているお店で探すなどして、いろんな塗装を楽しむベースにしていくのもいいのではないかと思います。
友野 升太 でした……。
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